“U.S. NAVYの00年代チノ。”

“U.S. NAVYの00年代チノ。”

NagaoDaisuke



休日の朝

クローゼットの隅に

掛けてある一本のパンツ。

きっちりアイロンをかけるでもなく

かといって雑に扱われるでもなく。

ちょうど良い距離感で、信頼している。

 

 

 

それがU.S. NAVYのデッドストック

2000年代製ユーティリティパンツ。

正式名称でいうと

コントラクトナンバー「SPO100-04-D-0324」

によって2004年に米海軍へ納入された実物だ。

インクスタンプ式のタグがその証拠。

プリントタグは

実は2000年代前半の

ミリタリーウェア特有の仕様で

量産・耐洗を重視したミルスペックならではの工夫。


 

 

ポリエステル65%、コットン35%。
黄金比のその先へ。

 

この組成を見て

あのパンツを思い出した人もいるだろう。

そう、ディッキーズ874と同じブレンドだ。

アメリカのワーカーたちが愛してやまない定番。

だけど、NAVYのこれは少し違う。

 

874が“ワーク”なら

NAVYパンツは“デューティ(任務)”。

より実践的で、より無駄がない。

ポリエステルが織りなす強靭さと

コットンの柔らかさの間に

ミリタリー独自の“実用美”が光っている。

手に取ると分かる

あのちょっとザラついた表面。

光沢のないマットな質感。

どこかストイックで、媚びない表情をしている。

 


 

ストレートに落ちる美しさ。

 

このパンツの最大の魅力は

なんといってもシルエット。

膝から下がほとんどテーパードしない

パイプドステム型で

まっすぐに地面へ向かって

落ちるラインが印象的。

まるで

軍服であることを

忘れていたかのようなミニマルさ。

 

ただ太いわけじゃない。

股上やヒップ周りにはしっかり余裕があって

それでいてだらしなく見えない

絶妙なバランス。

スニーカーを履けば

リラックスしたモダンシルエットに

革靴を合わせればドレスアップも成立する。


 

男ならば、“抜け感のあるきちんと感”。
女ならば、“媚びないハンサムさ”を。

 

このNAVYチノは

男が穿けばスマートなスタイルの礎になる。

シャツをタックインしても

Tシャツをラフに合わせても

シルエットが全体を引き締めてくれるから

どこか“整って”見える。


ラフだけど、だらしなくない。

軍パンなのに、品がある。


そして

女性が穿けば一気にハンサムレディの完成。

白のタンクトップに

ジャストサイズのブレザーを羽織って。

足元はキャンバススニーカーでも

革のサンダルでもいい。

スカートにはない潔さと

メンズライクすぎない直線的な美しさが

シルエットに芯を通してくれる。


 

“古い”じゃなくて、“整ってる”。

 

このパンツは、2000年代のプロダクトだ。

歴史的価値でいえば

ヴィンテージとは言えないかもしれない。

でも、ファッションにおいて

“旧いか新しいか”はひとつのピースでしかない。

 

なぜなら、服は着て完成するものだから。

そして、このパンツは穿くことで

はじめて価値を帯びていく。

それはミリタリーの世界も

私たちの街のスタイリングも

変わらない。


 

チノパンを超えたチノパン。
U.S. NAVYがくれた一本の答え。

 

このNAVYパンツは

ただの作業ズボンではない。

でも、軍パンの仰々しさもない。

そこにあるのは

真面目に作られた一本の実用品。

だからこそ、街に馴染む。

私服に昇華できる。

 

この一本があれば

朝の服選びに迷わない。

今日もまた

クローゼットの隅から無言で

「行こうぜ」と語りかけてくる。はず。

 

ブログに戻る

コメントを残す

コメントは公開前に承認される必要があることにご注意ください。