緑ワニとKYOTOの午後

緑ワニとKYOTOの午後

NagaoDaisuke


「青ワニ」の時代が終わったあと

静かにやってきた緑ワニの時代がある。

ちょっと色あせたパステルカラーのポロシャツ。

タグには、あの“LACOSTE”の文字と

おなじみの緑のワニ。

けれど、それが“フレンチ”ではなく

“アメリカ製”だったということを

どれだけの人が知っているだろう?

 

 

1980年代前半

アメリカのIZOD社が

ラコステとの契約の終わりに向かっていたころ

胸元のワニの色は青から緑へと

フレンチ仕様へ回帰していく。

青ワニの終焉とともに

ポロシャツは再び“正統”の顔を取り戻し始めた。

でもそれは決して保守的な意味ではない。

あの時代のアメリカが

もう一度クラシックを

自分たちの手で更新しようとした証だった。

 

 

80年代のアメリカ――。

舞台は西海岸から東へ。

サンタモニカの砂浜じゃなく

ニュージャージーのショッピングモール。

IZODのポロは

シアーズやJCペニーで山積みにされて売られていた。

それでもなぜか魅力的だったのは

当時の空気を纏っていたからだ。

ファッションがどんどんパーソナルになり

ポロシャツでさえも“誰がどう着るか”で

表情が変わった時代。

緑ワニのIZODは

そういう自由なプレッピーの入り口だった。

 

例えば、80年代後半の高校生たちは

サイズLのPATRONタグ付き

IZODをあえてブカっと着ていた。

パンツはLevi’s 501

スニーカーは白のKedsやローカットのReebok。

首元は少し立てて、腕まくりもゆるく。


今ならそのバランスを

カーゴパンツにリミックスしても面白い。

あるいはワンピースにレイヤードして

ポロの襟を“抜け感”として

使ってみるのもあり。

 

当時のタグを見ればわかる。

たとえば“MADE IN U.S.A.”の小さな文字

アメリカナイズされたIZODの織りネーム。

そして、丸く囲われた青ワニの刺繍。


それらはすべて

契約終了に向けた短い期間にしか

存在しなかったディテールたち。

逆に言えば

“狙い目”の緑ワニは

ほんの数年しか世に出ていない。

 

つまり、これはラコステの“過渡期”であり

アメリカ的なクラシックの

“成熟期”でもあった。

 

 

いま、80sの緑ワニをさらっと着こなすなら

たとえば生成りのデニムに

スエードローファー。

タックインして細ベルトを合わせれば

プレッピーにも見えるし

上にミリタリージャケットを

羽織ればソリッドにも見える。

アイロンでパリッと仕上げるんじゃなくて

あくまでラフに、でもどこか丁寧に。

服の選び方だけじゃなく

“着る所作”の方が問われる時代が

また戻ってきている。

 

緑ワニを、紹介する理由は

それがただのクラシックじゃないから。

青ワニの自由を知ったあとに辿り着いた

“正統のリミックス”としての存在。

ビンテージマーケットではまだ

比較的リーズナブルに手に入る今こそ

あえてこの過渡期の一着を

選んでみるのも悪くない。

 

誰もが青ワニを探す中で

緑ワニを選ぶという選択肢。

そのひねり方こそ

いまの京都ではちょうどいい。

 

 

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