銀に宿る、ナバホの輪郭。
NagaoAtsuko

ジュエリーを身につける
という行為は
「飾る」よりも前に
「考え方をまとう」ことなのかもしれない。
そう思わせてくれるのが
ナバホ族のインディアンジュエリーです。
ナバホの人々にとって
ものづくりは自己表現であると同時に
祈りであり、記憶であり
共同体との対話でもある。
自然と共に生き、土地や家族
歴史と深く結びついたその思想は
装飾性の強さとは裏腹に
とても静かで、誠実です。
**Ericka Nicolas Begay(エリッカ・ニコラス・ビゲイ)は
1996年生まれのナバホ族女性アーティスト。
彼女のジュエリーに
いわゆる“女性的”“男性的”という
境界線はありません。
そこにあるのは
ナバホとしてのアイデンティティと
作り手としての強い意志だけ。

大量生産や効率が優先される
現代において
彼女はあえて遠回りを選びます。
シルバーを溶かすところから始まる
インゴットシルバーという伝統技法。
すべてを手作業で行うその工程は
ナバホ族が古くから大切にしてきた
「手を動かすこと=精神を整えること」
という考え方そのものです。

手仕事だからこそ生まれる
わずかな揺らぎ。
エッジの奥に残る柔らかさ。
磨き込まれた銀の色に宿る深み。
それらは、ジェンダーや年齢を超えて
身につける人の輪郭にすっと馴染んでいきます。

ナバホ族の象徴とも言える
ナバホパール(ホーガンビーズ)も
彼女の手にかかると少し違って見える。
真珠のような丸みを持つこのビーズは
本来、ナバホの伝統的住居“ホーガン”を
かたどった神聖な存在。
あまりにも手間と時間がかかるため
今では機械製がほとんどですが
彼女の作品はビーズだけでなく
フックやコーンに至るまで
すべてオールハンドメイド。
性別を意識させないミニマルさと
確かな存在感が同居しています。

プレーンでモダンなデザインの
シリーズも印象的です。
一見すると静かでシンプル。
でもその裏側には、機械ではなく
「人の手」で作るという
揺るぎない姿勢があります。
真鍮でさえもメッキに頼らず
シルバーと同じ工程で仕上げる。
時間をかけて育てるように使ってほしい
という彼女なりのメッセージです。

天然石を用いた作品では
既成のパーツに頼ることはありません。
石の形や個性に合わせて
ベゼルから自ら作る。
それは装飾のためではなく
石と対話するための行為。
ナバホの思想に根付く
「すべてのものに意味がある」という感覚が
静かに息づいています。

フレッドハーヴィースタイルに
影響を受けたシリーズもまた
彼女らしい解釈が光ります。
軽やかで、日常に溶け込みやすいボリューム。
それでいて、スタンプ一つひとつには
意味があり、配置はまるで絵画のよう。
誰が身につけても成立する
けれど誰のものにもなりすぎない——
そんなバランス感覚が心地いい。
ナバホ族のジュエリーは
過去の遺産ではありません。
エリッカ・ニコラス・ビゲイの作品は
その思想が“今”も生きていることを
そっと教えてくれます。

ユニセックスであることは
曖昧にすることではなく
本質だけを残すこと。
その潔さが、今の気分にちょうどいいのです。
Ericka Nicolas Begay POP UP STORE
2月7日(sat)からスタートします。
ぜひその世界観に触れていただけると嬉しいです。