
重ねる、という選択。
NagaoDaisuke
京都の梅雨は、湿度が濃い。
体にまとわりつく熱気。
服の選択肢が極端に狭まる季節。
けれど、こんな時こそ、重ねる。
それは気候へのささやかな抵抗であり
ファッションへの誠実な態度だと思っている。
どうせ10月までは半袖一枚で過ごせる。
だからこそ、今この時季にしかできない
重ねを愉しみたい。
半袖のTシャツに、やや無骨なベスト。
そのぶん、パンツはシルエットで整える。
スラックスのもつ品の良さが
全体を都会的に引き寄せてくれる。
“粗さ”を持った一点に
“整い”で応えるスタイリング。
全身を古着でまとめるのではなく
どこかでキレイなラインを差し込むこと。
ファッションにとって
「調和」は少し退屈だから。
これは、服に手を加える愉しみを
思い出させてくれるコーディネート。
裾にドローコードがついたTシャツ。
その上に、BIGサイズのノースリーブ。
さらに裾を結んで
レイヤーに動きを加える。
着こなしに「遊び」があると
梅雨の空気も少し軽くなる。
作り込みすぎないこと。
でも、流さないこと。
カットオフスウェット × ハイゲージカーディガン
×デニムイージートラウザー
袖を落としたヴィンテージのスウェット。
ハイゲージのカーディガンを羽織ることで
温度にもバランスにも“調和”を。
このスウェットは
明らかにボロい。
でも、それでいい。
むしろ、他のアイテムを整える
理由になる。
無地の綺麗なTシャツを合わせたら
きっと完成度は上がる。
でも、それでは“記憶”に残らない。
ファッションは
ときに輪郭のない曖昧さにこそ
強さがある。
気温は夏に向かって一直線。
でも、ファッションには
グラデーションがあっていい。
重ねる。
調整する。
揺らぐ。
初夏のその一瞬にしか
できないスタイリングを
今、しっかりと味わっておきたい。