
「羽織る」という、夏の選択。
NagaoDaisuke
6月の京都。
湿気を含んだ空気が街を包み
Tシャツ一枚で過ごす人が増えてくる頃。
でも、まだ本格的な真夏ではない。
涼を探すように、街を歩く。
たとえば、朝の下鴨神社。
糺の森を抜ける
ひんやりとした木陰の道。
鳥の声と足元の土の感触に
気持ちがすっと落ち着いていく。
そんな空気に馴染むのが
黒のロングシャツワンピース。
リネンとレーヨンの混紡。
リネン特有の素朴で自然な凹凸と
レーヨンの持つとろみと涼感。
袖を通すと、空気のヴェールを
一枚まとったような感覚になる。
深すぎず、浅すぎないVネック。
フロントには丁寧に
施されたピンタックとダーツ。
品がありながらも力が抜けた佇まいで
身体の線を拾いすぎない安心感もある。
午後には、貴船へ。
川沿いの道を歩けば
水の音がずっと寄り添ってくる。
気温は市内よりも数度低く
木々に囲まれて自然と姿勢もゆるむ。
ワンピースのボタンを
いくつか開けて、風を通す。
ロールアップした袖から手首がのぞいて
動きも軽やかになる。
休日には北白川へ。
静かな住宅街のカフェで
読書をしたり
白川通を少し歩いて
古道具屋を覗いたり。
そんな気負いのないシーンにも
この一着はちょうどいい。
開けて羽織るとシャツコートのようになり
デニムやワイドパンツと好相性。
足元はスニーカーでも
トングサンダルでも様になる。
暑さの中でも
あえて“羽織る”という選択。
それは単なるUV対策ではなく
暑さと美意識のちょうどよい
距離感をつくるもの。
夏の京都を
少しでも心地よく過ごすための
静かな知恵。
ただ涼をとるだけではない
ファッションとしての避暑。
この黒のシャツワンピースは
その第一歩になるかもしれない。