
コードと畝のあいだに。70’sの空気をまとったワイドパンツ。
NagaoDaisuke
コーデュロイとシアサッカー。
ふたつのまったく異なる組織を
一枚の生地に共存させた
特別な6ウェル・コットンコーデュロイ。
その畝のあいだに
デザイナー自身が一本ずつランダムに
コットンコードを縫い付けていく。
同じものはひとつとして存在しない。
まるで音楽の即興演奏のように
偶然と計算が混ざり合うその布地は
手仕事の温度を
そのまま纏ったような表情をしている。
ベースになっているのは
ブランドで15年以上
つくり続けている2タックパンツ。
今季は両脇に両玉縁ポケットを
配した6ポケット仕様にモディファイし
一般的な
カーゴパンツのような無骨さではなく
都会的でどこか70’sの
匂いを残した
軽やかな印象に仕上げている。
デニム工場で脇や内股
センターバックを
巻き縫いで縫製しているため
穿き込むほどに生まれる
パッカリングも楽しみのひとつだ。
秋が深まりはじめた午後
少し光沢のある
タートルネックを合わせて街を歩く。
ローファーの革が
アスファルトを叩く音に
コーデュロイの畝がやわらかく響く。
どこかヨーロッパの古い街並みを
思わせるクラシックなムードが
漂うけれど
シルエットは今の空気を
まとっていて、野暮ったさがない。
気温が下がる夜には
黒のレザージャケットを
羽織ってみる。
太畝のコーデュロイが
硬質なレザーの質感を
やさしく中和し
古い映画に出てくる
70年代のL.A.の青年の
ような雰囲気をつくってくれる。
スニーカーを合わせるとぐっと軽く
タックの陰影が
動きに合わせて自然にゆれる。
週末の昼下がり
オックスフォードのシャツに
ニットベストを重ねるだけで
このパンツのボリュームが
程よい抜けをつくってくれる。
プレッピーな香りが
どこか懐かしく
でも不思議と今の街に
馴染むのは、素材の持つ
“生きた質感”のせいだろう。
ちょっとした喫茶店や
古本屋のカウンターにも、よく似合う。
日が落ちる頃には
グレーのスウェットに
ネイビーのコーチジャケットを羽織って
友人と映画館へ向かう。
力の抜けた組み合わせなのに
足もとにこのコーデュロイを
持ってくるだけで全体が締まる。
ラフで、でも品がある。
そんなバランス感がちょうどいい。
このパンツを穿くと
少しだけ時間の流れが緩やかになる。
手で縫い付けられた
コードの一本一本が
光を受けて微妙に陰影を変え
歩くたびに表情を変えていく。
巻き縫いのステッチが
少しずつ波打ち
気づけば自分だけの
一本に育っている。
均質さよりも
“癖”や“個性”を
大切にしたい人にこそ
このパンツはきっと響くはずだ。