“その後のデニムショーツ”

“その後のデニムショーツ”

NagaoDaisuke


以前軽く紹介したあのデニムショーツ

もう一度じっくり見てほしい。

というのも、この一本には

見た目以上に語るべきディテールが

詰まっているからだ。

 

 

まず素材。9.5オンスのデニムと聞くと

軽さだけを想像するかもしれない。

だがこの生地は、“逆スラブ糸”という

ややマニアックな糸によって成立している。

一般的なスラブ糸が

「太さにムラのある糸」だとすれば

これはその逆転の発想。

太い部分をベースに

ところどころ極端に細くなる構造が

独特の凹凸と立体感を生む。

結果、生地にはさりげない陰影と

ふっくらした柔らかさが宿り

ライトオンスながら“貧弱さ”とは無縁。

肌に触れたときの優しさと

しっかりした存在感の両立が

叶う稀有なデニムだ。

 

 

デザインは、以前触れた通り

6ポケットの変型仕様。

だがこの6つのポケット

それぞれの配置には機能と意味がある。

70年代のアウトドアブランドが

起源とされるクライミングパンツの構造と

往年のワークウェアの実用性が

同居するこの設計は

まさに“着るギア”とも言える。

都市生活において「ポケットは飾り」

になりがちな今

このショーツはポケットを

ふたたび“道具”として機能させている。

 

 

そして、最大の個性となる

黒ペンキのハンドペイント加工。

インディゴの上に

黒を染み込ませるようにのせるという

荒々しくも繊細な工程は

量産の効率とは真逆をいく。

滲み方、かすれ具合、のり方。

すべてが異なり

まさに一点一点が異なる表情を持つ。

量産品でありながら作品でもある。

この矛盾のなかに、所有する喜びがある。

 

 

時間とともに進行する

“エイジング”も三方向から楽しめる。

素材としてのデニムが色落ちし

縫製糸が浮き出し

ペンキは少しずつ剥がれ、擦れ

その人だけの履歴を刻んでいく。

それは育てる服というより

“共に過ごすプロダクト”という感覚に近い。

 

ただのショーツではない。

気温が上がるごとに手が伸びる

一本であると同時に

穿くたびに気持ちが高まる一本。

暑さに抗うための服ではなく

夏という季節と和解するための装備。

 

すでに紹介したあのショーツ

この夏、それがあなたの

“相棒”になるかもしれない。

 

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